クレジットカードの国際ブランド大手「Visa」の日本法人に対し、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行った。
Visaが自社の信用照会システムの利用を加盟店管理会社に強要し、ライバル会社を排除しようとした疑いが持たれている。
この事態はクレジットカード業界に大きな衝撃を与えており、今後の展開が注目される。
Visaに独禁法違反の疑い、公取委が立ち入り検査
- Visaの日本法人「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」に公取委が立ち入り検査
- 自社の信用照会システムの利用を加盟店管理会社に強要した疑い
- ライバル会社を市場から排除する狙いがあったとみられる
公正取引委員会は2023年4月17日、クレジットカードの国際ブランド「Visa」の日本法人「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」に対し、独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査を行った。
Visaが自社の信用照会システムの利用を加盟店管理会社に強要し、ライバル会社を市場から排除する狙いがあったとみられている。
クレジットカード取引を巡る独禁法違反の調査は初めてのケースであり、業界に大きな衝撃が走っている。
関係者によると、Visaは数年前から加盟店管理会社に対し、自社の信用照会システムの利用を要求。他社のシステムを使った場合は、決済手数料を引き上げることを示唆していたという。
この強要を受けたとされるのは、三井住友カード、楽天カード、セゾンカードなど大手カード会社だ。決済手数料の上昇は利益減につながるため、不当な要求に従わざるを得ない状況に置かれていたとみられる。
クレジットカード業界の構造とVisaの市場シェア
- クレジットカード業界は国際ブランド、カード発行会社、加盟店管理会社で成り立つ
- Visaブランドのシェアは国内クレジットカード利用額の約5割
- Visaの動向はクレジットカード業界全体に大きな影響を与える
クレジットカード業界は、Visaなどの国際ブランド、カード発行会社、加盟店管理会社の3者で成り立っている。国際ブランドは決済機能を提供し、カード発行会社は消費者への審査とカード発行を担当。加盟店管理会社は店舗との契約や決済手数料の収受を行う。
この3者が連携することでクレジットカード決済が成り立っているのだ。
日本クレジット協会の調べによると、2022年のクレジットカード利用額は約105兆円。5年前から約40兆円増加しており、キャッシュレス化の進展とともに市場は拡大を続けている。
この巨大市場でVisaブランドのシェアは約5割を占めており、Visaの動向は業界全体に大きな影響を及ぼす。今回の独禁法違反疑惑は、Visaの市場支配力の高さを背景としたものといえるだろう。
信用照会システムを巡る競争とVisaの戦略
- 信用照会システムはNTTデータなどが提供、Visaと競合関係に
- Visaは自社システムの利用を強要することでライバル排除を図った疑い
- 決済手数料の引き上げを示唆し、加盟店管理会社に圧力をかけた可能性
今回の事件の焦点となっているのが、信用照会システムだ。
クレジットカード決済では、加盟店管理会社がカード発行会社に対し、利用者の与信枠や不正利用の有無などを照会する必要がある。
この信用照会システムを提供しているのがVisaとNTTデータなどのIT企業で、両者は競合関係にある。
Visaは自社の信用照会システムの利用を加盟店管理会社に強要することで、ライバル企業の排除を図ったとされる。
他社システムを使った場合の決済手数料引き上げを示唆するなど、加盟店管理会社に圧力をかけていた可能性がある。
Visaにとって信用照会システムは重要な収益源の一つであり、自社システムの利用拡大は市場シェア維持・拡大に直結する。
独禁法違反のリスクを顧みない強硬姿勢は、Visaの危機感の表れともいえるだろう。
独禁法違反が及ぼす影響と今後の展開
- Visaへの処分次第では、クレジットカード業界の勢力図が変わる可能性も
- 加盟店管理会社の負担増加や、消費者への影響も懸念される
- 公正な競争環境の確保に向けた公取委の判断が注目される
Visaへの独禁法違反認定とその後の処分次第では、クレジットカード業界の勢力図が大きく変わる可能性もある。
Visaの信用照会システム利用が制限されれば、NTTデータなどライバル企業のシェア拡大につながるからだ。
ただしその場合、システム移行コストなどで加盟店管理会社の負担増加は避けられない。決済手数料の上昇という形で消費者に転嫁されるおそれもある。
独禁法違反の有無や、違反認定された場合の措置については公正取引委員会の判断を待つ必要がある。
ただ、クレジットカード取引のような消費者の日常生活に直結する分野で、競争制限行為が行われていたとすれば看過できない。
公正かつ自由な競争環境の確保に向け、公取委の断固たる対応に期待したい。
まとめ:クレジットカード業界の健全な発展に向けて
Visaの独禁法違反疑惑は、クレジットカード業界の構造的な問題を浮き彫りにした。
国際ブランドの寡占化が進む中、公正な競争環境の確保は容易ではない。
ただ、キャッシュレス化が加速する中で、クレジットカードは消費者の利便性を支える重要なインフラだ。業界の健全な発展なくして、消費者の利益は守れない。
公取委の調査を機に、クレジットカード業界の競争環境を改めて見直す必要がある。法令遵守は大前提として、各社には消費者目線に立った事業運営を求めたい。
国際ブランド、カード発行会社、加盟店管理会社が協力し、健全な市場の発展に努めることを期待する。